退職準備では、契約の種類を確かめ、退職日・最終出勤日・有休の取得日を分けて予定を組みます。意思を伝えた記録に、引継ぎと受取書類の予定を添えると、退職前後の作業を把握できます。
この記事は、主に民間の医療機関などで働く看護師に向けた、退職準備の一般的なガイドです。公務員として任用されている場合などは扱いが異なるため、人事窓口に確認し、契約や事情に争いがある場合は個別の労働相談を利用してください。
最初に、契約の種類と退職の手続を確認する

最初に、雇用契約書や労働条件通知書の「契約期間」を読みます。無期か有期か、有期なら今回の満了日と更新の扱いを把握することが、退職時期を考える出発点です。欄の読み方は、労働条件通知書のチェックリストでも整理しています。
あわせて、就業規則に書かれた退職の申出先、申出時期、指定の書式、書類の提出方法を調べます。書類を見ても分からない場合は、人事・労務の窓口に、どの規程が本人に適用されるかを尋ねてください。
| 先に確認するもの | 読む場所 | 確認のポイント |
|---|---|---|
| 雇用契約書・労働条件通知書 | 契約期間、更新、退職に関する事項 | 無期・有期のどちらかと、有期なら今回の満了日を確認する |
| 就業規則 | 退職の申出時期、提出先、手続 | 本人に適用される規程と、分からないときの窓口を確認する |
| 有休の管理記録 | 残日数、付与日、取得済み日数 | いつの記録かと、現在の残日数を確認する |
| 勤務予定 | 退職までの労働日と休日 | まだ確定していない勤務日を区別する |
| 貸与品・手続の案内 | 返却先、受取書類、連絡先 | 担当者と、それぞれの手続きの期限を確認する |
契約書が手元にない場合は、本人に適用される書面を人事・労務の窓口に求めます。勤続年数や勤務日数から推測せず、契約期間を確かめてから日程を検討してください。
退職を伝える時期は、無期と有期で分けて考える
無期契約には原則2週間のルールがある
期間の定めのない契約では、労働者から退職の申入れをした後、原則として2週間が経過すると契約が終了するというルールがあります。厚生労働省は民法627条1項を示す一方、トラブル防止のために就業規則の退職手続も確認するよう案内しています。任意退職の申出時期
ただし、この原則を、誰でも連絡当日から出勤しなくてよいという意味で使わないでください。契約の種類、意思表示の内容と相手への到達、合意の有無などが関わるため、この記事だけで本人の退職日を確定することはできません。
準備の時間が取れるなら、有休の取得日と引継ぎの予定を考え、早めに手続を進めましょう。就業規則と希望日が合わない、申入れを受け取ってもらえないなどの問題がある場合は、どちらかの説明を一律に正しいと決めつけず、資料を持って相談してください。
有期契約の途中退職は、同じ扱いにしない
有期契約では、契約満了で終える場合と、満了前に辞めたい場合を分けます。契約途中の一方的な退職には民法628条のやむを得ない事由などの検討が必要であり、無期契約の原則2週間をそのまま当てはめられません。有期契約の退職に関する説明
双方が退職日などに合意して契約を終了する方法もあるため、途中で辞めたい場合は、理由と希望日を伝えて相談します。合意できない場合や、費用・損害賠償の請求がある場合は、契約書と経緯を確認してもらいましょう。
また、1年を超える有期契約には、契約期間の初日から1年を経過した後、申出によって退職できる労働基準法137条の特例があります。ただし、一定の事業の完了に必要な期間を定めた契約や、同法14条1項各号の専門的労働者等・満60歳以上の労働者に係る契約は除かれるため、本人の契約が対象か確認が必要です。労働基準法137条
この特例の「1年」は、今の職場に通算で1年以上在籍していれば全員に当てはまる、という意味ではありません。たとえば1年契約を更新している場合も、今回の契約期間や更新の経緯を確認し、自分で適用を決めないでください。
| 状況 | まず確認すること | 注意点 |
|---|---|---|
| 無期契約で退職を申し出る | 意思表示と到達、希望日、就業規則 | 原則2週間と準備期間を混同しない |
| 有期契約を満了で終えたい | 満了日、更新手続、申出の方法 | 更新する前提のまま放置しない |
| 有期契約の途中で辞めたい | 合意の可否、事情、契約内容 | 無期と同じ期間で判断しない |
| 1年超の有期契約で特例を検討する | 契約の初日と期間、除外対象 | 通算勤続1年だけで判断しない |
| 公務員として働いている | 任用条件と所属の退職手続 | 民間雇用の説明をそのまま使わない |
上司には、退職の意思と日程の相談を分けて伝える
退職の意思が固まっている場合は、その意思と希望する退職日を簡潔に伝えます。まだ迷っている場合の相談とは分けると、相手にも今回話し合いたい内容が伝わります。
通常の窓口が直属の上司であれば、まず話す時間を確保します。上司への相談が難しい事情がある場合は、就業規則の窓口や人事部門に連絡し、同僚への話だけで正式な申入れが済んだと扱わないようにしましょう。
以下は、退職の意思が固まっている場合の編集上のサンプルです。文例だけで法的に退職日が決まるものではないため、契約や手続に合わせて使ってください。
「退職の意思をお伝えするため、お時間をいただきました。[日付]での退職を希望しており、必要な手続と引継ぎの進め方を確認させてください。」
退職理由は、実際の事情に沿って、手続に必要な範囲を伝えます。話しづらい私生活の詳細は、誰に何の目的で伝えるかを整理してから相談できます。
引き留められた場合は、退職する意思が変わっていないのか、提示された条件を検討したいのかを自分で決めてください。迷っているならその場で結論を約束せず、確認したいことと返答できる日を整理しましょう。
退職の意思、希望日、有休・引継ぎの日程を分けて伝えると、人事窓口も調整が必要な項目を把握しやすくなります。話し合いの後は、回答者と日付、決まったこと、残る質問を記録します。
退職願と退職届は、名前だけで効力を決めない
一般に、退職願は合意による退職を求める申込み、退職届は退職の意思を明確に伝える書類として使われます。ただし、厚生労働省の説明では、表題だけでなく、記載内容や当事者の言動などから判断されるため、名前だけで効果が決まるわけではありません。退職の申出と書類の考え方
「退職願ならいつでも取り消せる」「退職届を渡せばどんな契約でもその日で終わる」と考えないようにしてください。提出後に意思を変えたくなった場合も、相手への到達や承諾などの状況によって扱いが異なるため、速やかに相談しましょう。
書類には、対象と日付を明確にする
指定様式がある場合は、まず内容を読み、提出先と記載事項を確認してください。退職する日と提出する日を混同せず、氏名、所属、宛先、退職の意思が読み取れる状態に整えましょう。
次の表は、退職届を準備する際の編集上の記入サンプルです。契約途中の退職、退職理由に争いがある場合、解雇や退職勧奨を受けている場合の判断用書式ではありません。
| 項目 | 記入サンプル |
|---|---|
| 表題 | 退職届 |
| 宛先 | [雇用主・代表者等、指定された宛先] |
| 本文 | 私は、一身上の都合により、[年月日]をもって退職いたします。 |
| 提出日 | [実際に提出する年月日] |
| 本人情報 | [所属・氏名、指定に応じた記載] |
「一身上の都合」という文言は、どの退職にも無条件で使うものではありません。会社から退職を求められた、労働条件の相違やハラスメントがあるなど、退職理由の記録が重要な場合は、内容を確認せず署名・提出しないようにしましょう。
提出した書面の控えと、誰にいつ渡したかの記録は残してください。受取りを拒まれる、書き直しを求められる、日付が変えられる場合は、無断欠勤で解決しようとせず、次の連絡方法を公的窓口などに相談しましょう。
退職日・最終出勤日・有休の取得日を分ける
退職日は雇用関係が終了する日、最終出勤日は最後に勤務する日です。有休を取る場合などは両者が異なるため、それぞれの日付を勤務予定に書き込みます。
有休の残日数を確認したら、退職までの勤務予定と照らして、取得したい日を具体的に確かめましょう。有休は労働義務のない所定休日などには使えないため、カレンダー上の日数をそのまま有休日数として数えないことが必要です。有休を取得できる日の考え方
| 確認する項目 | 確認のポイント |
|---|---|
| 退職日 | 希望日と、申入れ済み・合意済み・確認中のどの段階かを区別する |
| 有休残日数 | 確認した資料・担当者・日付を確かめ、残日数を把握する |
| 有休取得日 | 退職までの具体的な労働日と照合し、申請方法と回答を確認する |
| 最終出勤日 | 退職日とは分けて、勤務予定上の最後の出勤日を確認する |
| 引継ぎの予定日 | 引継ぎを行う日、担当者、まだ終わっていない内容を確認する |
| 次の職場の入職日 | 本人の希望日なのか、確定した日なのか、調整中かを区別する |
表には、自分が申し出た日付と、勤務先からの回答を分けて残します。有休の取得は単なる会社の好意で決まるものではありません。下の制度説明も踏まえ、申請内容と勤務予定の食い違いを整理するための表です。
有休は退職日より後へ変更できない
年次有給休暇は、原則として労働者が指定した時季に与える制度で、事業の正常な運営を妨げる場合には使用者の時季変更権が認められます。ただし、退職日を越えて別の日へ変更することはできません。大阪労働局の退職前の有休Q&A
退職までの間に変更できる日がない場合は、時季変更権を行使する余地がありません。厚生労働省は、引継ぎなどのため退職日を遅らせる打診があっても、応じるかどうかは労働者の判断と説明しています。有休と退職日の関係
取得できる日数を検討するには、有休の残日数と退職までの労働日を照合します。休日と有休の違いも参考に、早めに具体的な日付を申請してください。「忙しいから無理」とだけ説明された場合は、理由と代替日の説明を記録して相談します。
以下は、有休の取得日を具体的に伝える編集上のサンプルです。残日数と勤務予定を先に確かめ、引継ぎの日程も実際に対応できる範囲で記載してください。
「年次有給休暇は、[取得する日付]を指定して申請します。引継ぎは[予定日]までに[担当者]へ行う案を考えていますので、担当者と必要な事項を確認させてください。」
残った有休の買上げを前提にしない
退職に伴って消滅する有休について、会社が買い上げることは法律上の義務ではありません。長野労働局は、退職時に残日数に応じて金銭を給付することが必ずしも違法ではない一方、在職中の有休取得を妨げてはならないと説明しています。年休の買上げに関する相談Q4
「残れば必ず買い取ってもらえる」「買上げはどんな場合も禁止」と一括りにせず、職場の規程と扱いを確かめましょう。有休を取る日と金銭の話は分け、説明に納得できない場合は、その内容を相談窓口で確認してください。
引継ぎは、残っている仕事と担当者を見える形にする

引継ぎ資料には、仕事の名称、現在の状況、期限、保存場所、次の担当者をまとめます。未完了の仕事と期限の近い仕事が分かれば、上司と優先順位を決めやすくなります。
看護師の引継ぎに患者情報などが関わる場合は、職場が定める記録・共有方法に従います。退職後に説明するためとして、患者情報や業務資料を私物端末、私用メール、個人のクラウドへ移さないでください。
| 引継ぎで伝える項目 | 確認のポイント |
|---|---|
| 業務・係の名称 | 担当していた業務や係を特定する |
| 現在の状況 | 完了・進行中・未着手を分け、残っている仕事を確認する |
| 次に必要な対応 | 次に何を、いつまでに行う必要があるかを明確にする |
| 資料の保存先 | 職場が認める保存場所を確認し、相手が参照できるようにする |
| 引継ぎ相手 | 上司が決めた担当者へ引き継ぐ |
| 説明・確認日 | 説明した日と、相手から質問された内容を確認する |
引継ぎ相手が未定なら、準備できた資料と残る作業を上司に伝え、担当を決めるよう相談します。後任未定だけを理由に退職日を無期限に延ばす前提にはせず、日程に争いがあれば公的窓口等を利用してください。
日程内に終わらない仕事が見つかったら、残る項目と理由を明らかにし、誰が引き継ぐかを確認します。退職後もいつでも無償で対応するといった約束をその場でせず、必要があれば範囲や条件を改めて整理してください。
退職の準備を進める段階では、次の作業と、日付がどこまで決まっているかを分けて残せます。
転職日程・引継ぎの整理に使うPDFの案内を見る
返す物と受け取る書類は、別の一覧にする

最終出勤日が近づいたら、貸与品の返却先と、退職後に届く書類の窓口を整理します。後日発行される書類もあるため、受取方法と発送予定まで控えておくと退職後の照会に使えます。
| 区分 | 確認する物・書類 | 担当窓口に聞くこと |
|---|---|---|
| 返却する物 | 職員証、鍵、制服、端末、貸与された資料など | 返却日、方法、受領の確認 |
| 雇用保険関係 | 離職票など、本人に必要な書類 | 発行の依頼方法、受取予定 |
| 税・給与関係 | 源泉徴収票、給与明細、退職金の案内など | 発行・支払予定、照会先 |
| 社会保険関係 | 資格喪失の確認に必要な書類など | 次の加入手続に必要な物 |
| 雇用の証明 | 必要に応じた退職証明書 | 証明してほしい事項 |
必要な書類は、次の就職までの間隔や本人が行う手続によって変わります。一覧を使い、勤務先と各制度の窓口に、自分に必要な書類と発行依頼の要否を尋ねてください。
労働基準法22条では、退職時に使用期間、業務の種類、地位、賃金、退職理由などの証明を本人が請求した場合、使用者は遅滞なく交付し、請求していない事項を記入してはならないと定めています。退職証明書が必要なら、使う目的に合わせて証明してほしい事項を伝えましょう。労働基準法22条
退職時に新たな誓約書や確認書が出てきた場合は、何を約束する内容なのかを読んでください。費用負担、損害賠償、他の職場への転職制限などが含まれ、意味が分からないときは、その場で署名せず控えを求めて相談しましょう。
退職から入職までの手続を、順番に確認する
契約期間、退職の申出先、就業規則を確認しましょう。有期の途中退職など判断が必要な点は、日程を確約する前に相談してください。
退職の意思と希望する日をそれぞれ明確に伝え、必要な手続を確認しましょう。話した相手、日時、回答、次の確認事項を記録してください。
有休の残日数と退職までの労働日を照らし、取得日を指定して申請します。退職日、最終出勤日、引継ぎ日は別々の欄に残します。
未完了の仕事、引継ぎ相手、返却品、受取書類を一覧にしましょう。退職後に確認が残る書類は、担当窓口と連絡方法を記録してください。
転職全体の日程を組み直す場合は、内定・退職・入職を逆算するガイドも参考になります。未確定の日付をそのまま次の職場との約束にしないようにしましょう。

次の職場と入職日を相談するときは、給与・勤務条件と入職日の調整ガイドを確認してください。現職との調整状況と、次に回答できる日を具体的に伝えましょう。

話が進まないときは、契約書と記録を持って相談する
退職の申入れを受け取ってもらえない、有休の扱いに納得できない、金銭を請求された場合は、契約書とやり取りを整理しましょう。自分で法的な結論を出して連絡を絶つより、どの点が問題になっているかを具体的に相談してください。
総合労働相談コーナーでは、労働問題について電話や面談による無料相談を案内しています。内容に応じた担当部署への取次ぎも行っているため、退職の経緯と確認したい事項を短くまとめて利用しましょう。総合労働相談コーナー
- 看護師は、後任が決まるまで辞められませんか?
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人手不足や後任未定という説明だけで、本人の退職日を決めることはできません。契約の種類と退職の意思表示を確認し、退職日を延ばすよう求められた場合は、その内容を整理して相談してください。
- 退職届は、必ず手書きで出す必要がありますか?
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まず勤務先の指定様式と提出方法を確認しましょう。手書きかどうかだけで法的な効力を判断せず、意思、日付、宛先、提出した記録が明確になるようにしてください。
- 退職を伝えた後も、有休を申請できますか?
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退職前であることだけを理由に、有休がなくなるわけではありません。残日数と労働日を確認して取得日を申請し、退職日より後への時季変更はできない点も踏まえて確認してください。
- 引継ぎのために退職日を延ばしてほしいと言われたら、応じる必要がありますか?
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有休の取得に関連して退職日を遅らせる打診があっても、応じるかどうかは本人が判断します。変更を検討する場合は、次の入職日や生活上の予定への影響を確認し、変更後の日付を曖昧にしないでください。
- 退職後に書類が届かない場合は、どうすればよいですか?
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勤務先の担当窓口へ、必要な書類の名称、依頼日、案内された受取予定を伝えて確認しましょう。手続の期限に影響しそうなら、その制度の窓口にも事情を説明し、必要な対応を尋ねてください。
退職の意思と、終えるための手続を両方残す
退職の意思を伝えたら、日程、引継ぎ、受取書類ごとに残る作業を整理します。回答者と期日が分かれば、どこへ次の連絡をするかを選べます。
最初は、契約期間、退職手続、有休の残日数を手元の資料で調べます。その後に退職日と最終出勤日を組み立て、判断に迷う点や争いがある点は資料を持って相談してください。
